「サプライチェーン・マネジメント」などというものは、まさに「原因と結果」因果関係の世界なので・・・ことあるごとに「お釈迦様が言ってることは正しい」と感じることがありました。お得意の拡大解釈も含めて。
また、仏教における「ナレッジ・マネジメント」の奥深さ、うまく言葉では言い表せない感覚を体系化して、あの手この手で伝えようとアプローチした様子は非常に面白く、ノウハウの宝庫に見えてきます。
縁に恵まれたのかは知る由もありませんが、認知プロセスから人間の成長や組織の変革を検証するような機会がありました。そんな中で感じたのは、本来のブッタの教えは哲学や認知科学に近い存在ではないかということ。また、科学が未発達だった時代に、経験値からそれを体系化しようと試みた結果ではないかということでした。
個人的に、思い込みを解きほぐさないと先に進めないことが多かったりもしたので、自分の内面にフォーカスした結果、坐禅やヨガ、瞑想に触れたのも自然な流れでした。
ただ、どれもこれも決定的な納得感には至らず・・・まあ、仮に論理的に理解して頭で分かったとしても分かったとは言えない世界なので・・・ジムで筋トレしながら、一法庵のポッドキャストを聞いたりしていました。
そこに、言った言わないみたいな話でw 道場破りwww に現れたのが、ニー仏さんこと魚川祐司氏でした。
このあたりの経緯は、こちらに詳しい記載があります。
山下良道師と魚川祐司氏の対話。
山下良道先生の批判に応える(一法庵鼎談・資料)
そんなわけで前から気になっていた「だから仏教は面白い!」を手に取りました。非常に読みやすく、会話形式で展開する内容に引き込まれました。著者の魚川氏は『仏教徒ではない』らしいのですが、哲学者として豊富な知識があり、現在はミャンマーで修行を実践されているとか。この「ちょっと引いた立場」から仏教を研究しているスタンスが素晴らしすぎる!
全編に渡って読み応えありましたが、自分としては特に「無我」「輪廻」「無記」に関する説明の章がスッキリしました。
仏教に対するよくある誤解なんですが、仏教というのは「無我」を説くものであって、ゆえに悟ったものは「無我」を悟るのである。したがって悟った人には当然「私」というものが全くなくなって、世界と一つになってしまうのだ。そんなふうに考えている人たちもいます。でも、実際にはそうはならないわけですよ。(P144)
無我の「我」と、無我を見ている「私」の関係は、「我≠私」なのでした。
一生懸命に苦行して身体をいじめたりとか、あるいは一生懸命に瞑想したりすれば、「いま僕は発見できていないが、どこかに常一主宰の変わらない本当の私、実体的な私、アートマンというものがあるはずだ。だからそれを探そう。探すために色々なことをしよう」というふうに頑張っていたわけです、そこで、ゴータマ・ブッダは、そういうアートマンというのは少なくとも現象の世界の中にはないよ、という話をしたわけです。(P147)
ああ!「無我」ってそれで良かったのか!だから『輪廻に「主体」はない』でいいのか!だからそこは「無記」でいいのか!・・・自分の頭の中で定義文を書き換えたら認識のバグが取れてスクリプトが一気に走り出した感じ・・・雷に打たれたとでもいうか・・・明け方にベッドの上で、身悶えしながら読みました。
もしかすると、そこに近づいていたのかもしれないけれど、自分の感覚に確固たる自信などは持てないわけです。これだけ大きなインパクトで認識の変化があると、世界が違って見えてくるし、自分が見ているものごとに関する受け止め方も自分の中で変わってきます。
先に発行されていた「仏教思想のゼロポイント」も早く読みたかったけれど、本当にニートになりそうだったので・・・少し落ち着いてからにしました。
改めて読むと、書いてある内容はほぼ同じなのですが、方便というか、違った表現で書かれているので、双方を読み比べることで理解が深まります。論文調の堅い文面と、くだけた調子の講義ライブは、教科書と参考書、大学の先生と家庭教師のお兄さんみたいな関係なのです。流石だ!!!!!「ナレッジ・マネジメント」として、すごく高度なお手本を見せてもらった気がして、その点でも唸りました。
仏教に興味がありながら、どこか違和感を持っている人におススメします。
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